大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京家庭裁判所 昭和41年(家)7859号 審判

申立人 東京都○○児童相談所長 X

事件本人 C 昭和○年○月○日生

保護者親権者 D

主文

申立人が事件本人を教護院に入所させることを承認する。

理由

本件申立の要旨は、事件本人は母一人子一人の母子世帯で、保護者は知能低く生活力もなく、現在aマーケットの残飯拾いをしており、住居も安宿を転々としている状態である。事件本人は中学にもほとんど通学せず、昭和四〇年以来次のとおり非行を重ねている。

(イ)  昭和四〇年六月二〇日郵便物窃取

(ロ)  同年六月二二日自動車内よりラジオ窃取

(ハ)  昭和四一年一月九日西武百貨店で買物客より現金三、〇〇〇円在中の定期券窃取

(ニ)  同年六月二五日埼玉県草加市の飲食店で味の素六、〇〇〇円相当窃取

したがってこのまま放置するときはいよいよ非行が激化することは明らかである。事件本人は昭和四一年六月二六日埼玉県△△児童相談所よりの移管により当所に保護され、七月一三日の措置会議で教護院措置が適当と決定したが、保護者が何としてもこの措置を承諾しない。しかもこのまま事件本人を保護者に監護させることは、事件本人の福祉に明らかに反することであり、殊に事件本人は母の許に帰ることを強く拒否しているで、ここに児童福祉法第二七条第一項第三号の措置の承認を求めるべく、本申立に及んだ次第であるというにある。

よって審案するに、事件本人、A、B各審問の結果、家庭裁判所調査官の保護者に対する調査報告書申立人提出の児童票および戸籍謄本を綜合すれば、申立人主張の事実は全部認められ、その事実によれば、事件本人の福祉のため、この際同人を教護院に入所させることは相当であり、また事件本人も母の許に帰ることを嫌って自ら教護院に入所することを希望しているので、本件申立は認容することとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 日野原昌)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例